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資産運用の常識・非常識①

資産運用の常識・非常識①

金融教育がほぼ導入されていない

日本において

我々の常識は

投資という世界では非常識

ということも多々あります。

今回からはシリーズで、

色々な投資の常識・非常識について

取り上げてみます。

資産運用は経済の予測が重要?

投資と聞いて、
ほとんどの方が思い浮かべるのが

資産運用は経済の予測が大切

こういったイメージではないでしょうか。

経済が今後、上向いていくのか。
でも、これだけ不景気だし…
そもそも経済の動きは難しくて
自分には出来そうもない。

現場でお客様と話している中で
多くの方がこういうイメージを
お持ちだと感じています。

その結果、投資など自分には
程遠いものだと考えて
敬遠してしまう方もおられます。

短期投資はWhere 長期投資はWhy

以前も記事にしましたが
投資には「短期」と「長期」があります。







短期の投資、すなわち「投機」においては
マーケットの予測はとても重要。
予測が当たって初めて、
資産を増やすことができるからです。

一方で、
長期の投資をしていくのであれば
マーケットの予測は不要です。


この部分は、実は販売する側
つまり金融機関の方も分かっていません。

ですから当然、売られる側(お客様)が
分かるはずがないのです。


投資で短期のゴールを目指すなら【Where】
すなわちどの国の
どの企業の株価があがるのか

これを瞬間瞬間で見極め、予測し
将来にわたって
的中させ続けなければなりません。


一方で、長期投資は【Why】

なぜ、世界の株式は
長期的に値上がりを続けているのか
なぜ、世界経済が
成長し続けているのか

これを理解することが重要で
どこが上がるのか?という予測は
必要ではないと言い切れます。


繰り返しになりますが
短期投資と長期投資は
根本から全く違う行為だということを
理解してください。

双方は全く別の世界で
やり方も全く違うのです。


この考え方が担保されれば

長期的な分散積立投資は
世界経済が成長し続ければ成功
しなければ失敗


この単純な論理となります。

くどいようですが
この考えを大半の営業マンが
分かっていないのだから
一般のお客様が分からないのは
当然です。

暴落前に売り抜けないとまずい?

とはいえ、投資につきまとうものに
【株価の暴落】があります。





長期投資だかなんだか知らないけど、
投資をする上で
定期的に起こる暴落はやっぱり怖い。

暴落の前に売っておいた方が安心できる
と考えるのが普通でしょう。

ここで、まず押さえていただきたいのは、
暴落前に売り抜けるのが
重要というのは
あくまでも
短期投資の考え方だということです。

POINT

「暴落前に売り抜けるのが重要」
これは短期投資の考え方


とはいえ、SNSをかじりながら
投資に挑戦している状態で

例えばリーマンショック級の
大暴落が起こった時
冷静でいられる人は
恐らくいないでしょう。

リーマンショックとは2008年9月
大手の投資会社である
リーマン・ブラザーズが
経営破綻したことで起きた
世界的な経済危機のことです。



アメリカだけではなく
世界中の市場が大混乱に陥り
株価は100年に一度の大暴落と
呼ばれるまでに急落しました。

この大暴落を経験した中には、
「暴落の前に株を売っておけば・・・」と
強く後悔した人も多くいたでしょう。

米国株式に見る
投資家の一喜一憂

画像は1998年から
2019年までの
米国株式(S&P500指数)の
値動きです。

まずはA付近の値動きを
見てみましょう。

リーマンショック直前まで、
株価は上昇を続けていました。
要因は住宅バブルと
サブプライム・ローン(※次項参照)
の広がりです。

バブルですから
単純に景気が良いわけです。

こういう時は
代表性バイアス(※)が
働きますから
皆、株価はこれからも
上がり続けていく
と思っています。


※代表性バイアス
一度「あるべき姿」を
思い描いてしまうと
新たな情報がもたらされた後にも、
その「あるべき姿」から
逃れられなくなってしまう現象。
投資の世界においては
株価が上昇している局面では
株高が今後もずっと続くだろうと
錯覚してしまう。


誰もが今後の株価の上昇を
信じて疑わない状況。

ほぼ全ての投資家が
「世の中は薔薇色」と
思ってしまいます。



本来よりも
株高なわけですから
売って利益を出したら良いのですが
普通は、こういう時に
売る勇気は出ない。

もっと上がるだろうから
もっと買いたい。

後から情報を聞きつけた
個人投資家も便乗して
皆がどんどん買うから
どんどん株価が上がる。

後から見れば
「この時に売ればよかったのに」
と思いますが
それはあくまでも
後から見れば、という話です。

将来の株価、明日の価格さえ
どうなるのか分かりません。

Aのような好景気
イケイケドンドンの状況で
実際に株を売る人なんて居なかった。

結果、リーマンショックが起こるまで
米国の株価は上がり続けました。

YahooFinance「S&P 500 (^GSPC)」

サブプライム・ローンとは

【リーマンショック前夜】
とも呼ばれる
リーマンショックの
引き金になったと言われる
住宅ローンの仕組み。

ローンの信用度が劣る
低所得者を対象とし
一般の住宅ローンよりも
金利が高めに設定されているが
その分審査基準が緩和されている。

簡単に言うと
貧乏な人でも簡単に
住宅ローンを組めた。

米国では2004年頃から
住宅バブルが起こっていたため

貧乏でもマイホームを建てられる!
ということで急速に普及した。

住宅バブルの終焉

上昇し続ける米国株に
皆が陶酔していた2008年
ついにリーマンショックが起こります。

Bの値動きをご覧ください。

この時、たった1年で
株価が60%も下がりました。

今まで、株価は上がり続けると
思っていた投資家たちは
絶望したことでしょう。

2008年末から
2009年のお正月は
まさに世の中絶望。

「もうだめだ」
「これだから投資は嫌だったんだ」
「米国株は10年は戻らないぞ」
「世界金融恐慌が来てしまった」

本来
短期投資のセオリーで言うと
通常の株価よりも安く買える
この状況は「買い」なのですが
実際の値動きはどうでしょうか。

皆が我先にと株式を売却し
株価はどんどん下落しました。



その後、Cのように
多少株価が戻ってきたとしても、

「ただの反発だろう」
「また暴落する」
「経済は良くなっていない」と疑い

市場は悲観に満ち溢れました。

株価が暴落前の水準に戻るまでは
将来に対して楽観視はできません。

皆さんが投資家として
大切な資産を投資しているとします。

教科書上では
「株価が安いんだから
買い足せば良いんだよ」
となりますが

本当にこの状況に直面したとして
その勇気はあるでしょうか?

アンカリング効果が邪魔をする

投資家の心理に
【アンカリング効果】
というものがあります。

過去の株価水準が
アンカー(錨)のように頭に残り

その株価水準に
心を囚われてしまうことで
合理的な投資判断が
できなくなります。




例え話で説明してみます。

Aという店で
皆さんのお気に入りのバッグが
1万円で売っています。

一方、隣のBという店は
現在セール中で

同じようなつくりのバッグが
定価2万円のところ
なんと1万円で売っています。

皆さんは
どちらが欲しいでしょうか?

同じようなバッグが
どちらの店でも
同じ価格で買えるわけですが

何となくBの店が
お買い得に感じるのではないでしょうか。

定価2万円のバッグが、
セールで1万円に値下げ

という情報があると

「本当は2万円するバッグが
1万円で買えるのはお得」

という感覚になるはずです。


私たちは、

このバッグがどんな生地で
どんな縫製で
耐久性はどうで

といった【性能】の面よりも

セール中でお得に買える、といった
【値段】の方に注目しがちです。





これを「アンカリング効果」といいます。
アンカリング効果は
スーパーや小売店などで
値札で客の目を引く手法として
よく使われています。

「大幅値引き」
「特別セール」
「本日限り」などのPOPを
目にしたことがある方も
多いのではないでしょうか。

早朝の通販番組を見ていると

業者さん「価格はズバリ!
19,800円です!」

タレントさん「うーん、もうちょっと
頑張ってもらえませんか?」

業者さん「くぅ~。・・・分かりました!
1万円お値引きして9,800円!」

こんな微笑ましいやり取りが行われています。

仮に、もともと9,800円で
売ろうとしていたとしても

一度、高い値段を見せておくことで
消費者はお得感を感じます。

これもアンカリング効果を使った販売テクニックですね。

我々は何かを判断する時
最初に提示された数値的な情報が
強く印象に残り
それを基準(アンカー)として
判断してしまうという
心理的な傾向があります。

少しでも安く買いたい。
少しでも得をしたい。

こんな気持ちを誰しも持っています。

少しでも「安く感じる」
ものを見せられると、

実際には論理的な思考が
できなくなるのが人間の心理です。

そして、投資をしていく上で
知っておきたいのは

「アンカリング効果」に影響され
投資の世界ではこの不合理な選択が
往々にして起こってしまう


ということです。

アンカリング効果の実例

例えば、こんなケースを
考えてみてください。





皆さんが
「よし、この銘柄を買おう!」と
狙っていた株があるとします。

現在の価格は2,000円です。

この銘柄のことを
詳しく調べていくと

ほんの少し前には
4,000円まで値上がりしていた

ということが分かりました。

さあ、皆さんは
この銘柄を購入する時
どんなことを考えますか?


最近まで株価は上がり続けて
4,000円だった。

今は一時的に2,000円に
下がっているだけで

すぐに4,000円、悪くても
3,000円くらいには
戻るはずだ。

だから今買っておこう



こう考える場合
それをアンカリング効果の
【高値覚え】といいます。


逆に、アンカリング効果には
【安値覚え】もあります。





先ほどと同じく
現在2,000円の
価格をつけている
銘柄があるとします。

しかしこの銘柄は

ほんの少し前まで
株価が下がり続けていて
底値が1,000円だった

としましょう。

この時、
1,000円という安値が
アンカーのように
頭に残ってしまうので


この銘柄は最近
下がり続けているから
今は一時的に高いけど
どうせすぐ下がるだろう




などと
考えてしまいがちです。

この銘柄が3,000円、4,000円と
上がっていく可能性もあるのに
そのイメージを持つことができずに
買いのタイミングを逃してしまう。

これもアンカリング効果の影響です。

投資の出口判断は難しい

SNSの普及
インフルエンサーの台頭で
投資の入り口は
大変広くなっています。

とにかく簡単に始められ
一部の若者の間では

「つみたてNISAを満額してます」

というのが
ステータスにすら
なっているようです。

一方で出口論
つまり投資を止めるタイミングについて
計画を立てている方は
どれほど居るでしょうか。


何となく、良い感じの時に売り抜けたら良いんでしょう?


と、安易に考えている方は多いでしょう。

ただ、残念ながら実際に
株価の変動の中に身を置くと
冷静な判断ができなくなることを
アンカリング効果の例から
ご理解いただけたのではないでしょうか。


長くなってしまいましたので
次回の記事に続きます。

今回も最後までお読み下さり
ありがとうございました。

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