BLOG ブログ

投資信託の歴史③

「買ってはいけない」と言われたかつての日本の投資信託ですが、運用や制度(法律)という側面についてはしっかりと整備が進んできました。しかし、もう一つの側面【販売】については旧態依然、1990年代以前とほとんど変わっていない、と指摘されています。投資信託の歴史シリーズの最後に、日本の投資信託の販売実態とその影響について確認していきます。

投信販売の不都合な真実

積み立て分散投資の効果

冒頭の画像をご覧ください。
これは金融庁が発表している「積み立て分散投資の効果」についてのデータです。

1995年から2015年までの20年間に、「こんな運用をしていたらこんな成果になりましたよ~」という実績で、赤色、青色、緑色のデータが表示されています。
(今回は青色については割愛して、緑色と赤色のデータについて説明します。)

緑色のグラフは、定期預金の実績です。
年平均では0.1%、20年で1.32%の運用実績だということが分かります。

赤色のグラフは、【積み立て分散投資】の実績です。
積み立て分散投資とは、国内、先進国、新興国の株や債券を、それぞれバランス良く積み立てる投資方法です。

年平均4.0%、20年では79.9%と、定期預金とは大きく違う実績となっています。

79.9%と言われても、特に今の時代の私たちにはピンと来ないかも知れません。

例えば、毎年100万円を20年間積み立てたとします。
100万円×20年で、原資は2000万円ですね。

このときの運用実績が79.9%だと、原資の2000万円はなんと
【3600万円】にまで増えたことになります。

1995年から2015年はたまたま景気が良かったんだろう、と思われるでしょうか。
実はそうでもありません。

1995年 阪神大震災
1997年 アジア通貨危機
2000年 ITバブル崩壊
2001年 アメリカ同時多発テロ
2003年 イラク戦争
2008年 リーマンショック
2010年 ギリシャ財政危機
2011年 東日本大震災

経済に関わる大事件がたくさん起こっています。

金融庁のこのデータから分かることは、
【積み立て分散投資は、時代背景にかかわらずある程度の実績を出してきた】

ということです。

日本の投信の実績

一方で、日本で主に販売されてきた投資信託の実績はどうなっているでしょうか。

上記のデータは同じく金融庁の説明資料から、「規模の大きい投資信託の日米比較」です。

赤枠で囲った部分をご覧ください。
日本で主に販売された投資信託の、過去10年の収益率(年率リターン)です。

マイナスになっていますね。元本割れです。
10年も投資して、結果は元本割れ。

これが、日本の投資信託の実績です。

皆さんが当事者だったら、どう思われますか?
きっと、「投資は危ない、二度としない。周りにも教えてあげよう」と考えるのではないでしょうか。

日本人の投資への恐怖は決してイメージだけではなく、事実として元本割れを起こしてきた歴史があります。

日本の投信は【相場】販売

上記のデータは、投資信託の年別売上ランキングの日米比較です。
2006年、2011年、2016年と、5年毎にどのように推移しているかを示しています。
純資産総額が大きいものが、国内で多く販売されたものです。

赤枠で囲ったのは、日本国内の実績です。

日本の売れ筋BEST5は、時代とともに顔ぶれがだいぶ変わっていることが分かります。
2016年は、REIT(リート・不動産投資)が多く販売されているようです。

一方で、米国の顔ぶれは2006年以降、ほとんど変わっていません。

ここから何が見えるでしょうか。

それは、

日本の投資信託は【相場ベース】で販売されている
ということです。

相場ベースの販売とは何か。

お客さん、今はこの商品の相場が上がってますよ。
今の投信は相場が下がってるんで、損切りしてこっちの新しい商品に変えましょう。

こんな具合に、【相場】をネタに投資商品の売ったり買ったりを繰り返す手法です。

ここに、日本の投信販売における最大の問題があります。

頻繁な乗り換えはリターンにダメージを与える

もう一度、「規模の大きい投資信託の日米比較」のデータを見てください。
日本の投資信託は、10年でマイナス運用という実績でしたね。

では、米国の実績はどうなっているでしょうか。
青枠で囲った部分を確認すると、5.20%としっかりとプラスを出していることが分かります。

なぜ、同じ期間で日米にこれだけの乖離が生まれているのか?
このデータから分かることは、

【投資商品の乗り換えを繰り返した人は平均的に損している】
【乗り換えの少ない米国はリターンが大きい】

別の言い方をすると、【投資信託を頻繁に乗り換えると損をする可能性が高くなる】ということになります。

金融機関が積み立て分散投資を勧めない理由

積み立て分散投資を長期で続ければ、ある程度のリターンは期待できる。
金融庁のデータからはこんな事がわかります。

これは、昨日今日出てきたデータではありませんから、
金融の世界ではごく当たり前のこととして知られている。私はそう思っていました。

ではなぜ、日本の金融機関は積み立て分散投資を推奨せず、
相場ベースの乗り換え販売で30年以上、お客様に損失を与え続けているのか。

ある時知り合った、やり手の証券マンの方に勇気を出して聞いたことがあります。

私としては、ノルマや手数料のためにやむを得ず…という話題が出てくるものと思ったのですが、
その方からは全く予想しない答えが返ってきました。


「積み立て分散投資という概念を初めて聞いた。会社では全く学んでいない」


彼らはお客様に損をさせたいわけでも、身入りの良い商品を優先して販売しているわけでもなく、
【そもそも相場ベースの投資方法しか学んでいない】というのです。

(もちろん全員がそういうわけではなく、知ってはいるけど食べていくために…という方もいるでしょう。)

金融マンの” 助言 ”はお客様に付加価値を与えているのか。
当たった金融マンによって、お客様の将来は大きく変わってしまうということを考えさせられる出来事でした。

まとめ

今回のまとめです。

・積み立て分散投資は過去高いリターンを出している
・日本の投信販売は【相場ベース】が主流
・乗り換えを繰り返すと元本割れをしやすい
・日本で積み立て分散投資の概念は販売する側にも十分に広まっていない

ここまで投資信託の歴史について、シリーズで記事にしてきました。

なぜ日本では投資アレルギーの方が多いのか。
それは日本での投資信託のはじまり、運用や制度、販売方法の問題、
そして元本割れを起こしてきた事実など、多くの側面が影響しています。

当ブログでは今後も、長期積み立て分散投資についての情報提供を続けていきます。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

CONTACT
お問い合わせ

資産運用や家計についてのご相談、
セミナー開催・提携依頼などは
以下のフォームから
お気軽にお問い合わせくださいませ。