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投資信託の歴史①

投資信託の歴史①

前回は短期投資と長期投資についてお話しました。

長期投資を始める上でまず、【投資信託】という仕組みを理解していく必要があります。

今回からは投資信託の歴史について、シリーズでお話していきます。

投資信託の起源は英国?

世界で最も古い投資信託

フォーリン・アンド・コロニアル・インベストメント・トラスト(Foreign & Colonial Investment Trust)という投資信託をご存知でしょうか。

1868年に英国で誕生した、世界で最も長く運用が続いていると言われている投資信託であり、現在まで実に150年以上も運用が続いていることになります。

英国での投資信託の歴史はどのようなものでしょうか。

きっかけは大不況

1873年から約20年にわたって、欧米の主要国では物価の下落(デフレーション)が続いていました。

原因は、ドイツや米国での工業生産の急増、輸送コストが下がった影響で穀物価格も下がるという、世界的な産業構造の変化、と言われています。

この変化によって、当時の先進工業国だった英国では、鉄鋼業など主要な産業の競争力が低下し、なんと23年間もの長い間、景気後退を余儀なくされました。

この大不況の中で金利は低迷し、国民は次なる成長指標を模索していました。
ここで登場したのが世界最古の投資信託、フォーリン・アンド・コロニアル・インベストメント・トラストでした。

投資信託が支持された背景

当時の時代背景を分析してみると、なぜフォーリン・アンド・コロニアル・インベストメント・トラストが支持されたかが分かります。

上記で説明した通り、当時の英国は物価下落(デフレーション)、景気後退に苦しんでいました。

不況で預金などの低金利は状態化し、かと言って英国国内で投資を行っても高い利益を期待できるような状況ではありません。
現在の日本と似た状態ですね。

一方で、英国から見た外国には「高金利」の国もたくさんありました。

アルゼンチン、オーストリア、ブラジル、チリ、エジプト、イタリア、ペルー、ポルトガル、ロシア、スペイン、トルコ、アメリカなどです。

これら高金利の国の債券を買えば、英国国内で運用するより高い利益が期待できます。

そこに目をつけたのがフォーリン・アンド・コロニアル・インベストメント・トラスト。
上記のような高金利の政府発行の債券を購入する投資信託です。

ちなみに当時、新興国扱いだった日本政府発行の債券の金利は約7%でした。
これも英国では人気の商品だったと言われています。

条件の良い(と思われる)外国に投資をして利益を得る。
これが英国で生まれた世界最古の投資信託であり、当時の時代背景をもとに国民自ら発展させてきたものです。

日本での投資信託の歴史

日本の投資信託のはじまり

英国での投資信託の歴史をご紹介しましたが、日本については少々経緯が異なります。

終戦から1952年にかけて行われた財閥解体などのGHQの政策によって、大量の株式が市場に開放されるかたちとなりました。

市場に株式が溢れ、需要よりも供給の方が上回ったわけですから、その価値は非常に低くなりました。
低迷する株式市場を放置すれば、国の経済に悪い影響を与えてしまいます。

この状態を救うために日本政府は次のように考えました。

【国民の持っている預貯金を、なんとか株式市場に引っ張ってこれないか?】

これが、日本に投資信託という仕組みが生まれた経緯となります。
面白いことに、現在の日本政府も全く同じことを言っていますね。

英国との違い

英国では【国民自らの意識で】、
日本では【政府が株式市場を救うために】投資信託が生まれた。
ここが大きな違いです。

日本国内には「大衆が買いやすく、証券会社が売りやすい預貯金類似商品」をが出回りました。
この時は、なんと【2年満期】の株式投資信託が登場し、こぞって販売されました。

※預貯金類似商品はざっくり言うと、「預貯金のようなものだと勘違いさせて販売する投資商品」です。
この販売手法は残念ながら現在でも横行しており、皆さんの周りにも「預貯金よりは貯まりますよ~」と勧められて加入した、良く分からない金融商品をお持ちの方がいらっしゃるかもしれません。

・低迷した株式市場を救う目的があった。
・そのために預貯金を株式市場に流入させる必要があった。
・手っ取り早く販売するために、戦略的に「投資は預貯金のようなものだ」と勘違いさせた。

これらが、日本における投資信託登場の経緯と言えます。

日本人が感じた恐怖

株式の短期運用は、元本が増えることもあれば減ることもあります。
当時の日本人の中には当然、資産を減らしてしまった方もいたでしょう。

「預貯金のようなもの」と聞いていたわけですから、資産を失ってしまった方が感じた恐怖や悔しさは想像を絶するものがあります。

この時の体験がトラウマとなり、強烈な負のイメージとして長らく意識に焼き付いたもの。
「投資は危険、元本保証の預貯金が安心安全」という考えはある意味で、日本における投資信託の生い立ちが影響しているのかも知れません。

一方で現在、若者を中心に投資が大流行している理由にはSNSのほか、長い年月の中で元本割れのトラウマを経験した人が減り、負のイメージが薄れてきたからという見方もあります。

まとめ

今回は投資信託の起源から、投資に対する国民の考え方、とりわけ英国と日本の違いについてお話させていただきました。

・世界最古の投資信託は英国発祥
・英国は国民自ら投資信託を発展させた
・日本は市場を救済するために政府が仕組みを創った
・国民の利益は二の次の政策だった
・元本割れの経験が日本国民に投資への恐怖を植え付けた
・恐怖を知らない世代に株式投資が大流行している

今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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