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円安で値上がりするのはなぜ?

2022年10月20日、歴史的な円安「1ドル=150円」を記録しました。円安による物価上昇が止まりませんが、そもそもなぜ、円安になると物価が上がるのでしょうか。

円安になると輸入価格が高くなる

新型コロナウイルス、また戦争の影響もあり、物価上昇(値上がり)が止まりません。
ニュースを見ていると、「円安の影響でまた値上がり」という言葉がよく聞かれます。

前回の記事で、円安とは円の価値がドルに対して下がっている状態、という説明をしましたが、
そもそもなぜ、円の価値が下がると私達の身の回りの物価が上がるのでしょうか。

結論から言うと、円安になると輸入製品の値段が高くなるからです。

例えば、1ドルの小麦を輸入するとします。
為替相場が1ドル=100円であれば、100円で輸入できますね。

ここから円安が進み、1ドル=150円になるとどうなるでしょうか。
以前は100円で買えた小麦が、150円出さないと輸入できなくなります。

100円で買えたものが、150円払わなければいけない。
「円の価値が低くなった」ことで、輸入価格が高くなってしまいました。

では、輸入価格が上昇するとなぜ、身の回りの物価が上がってしまうのでしょうか。

日本の食料自給率について知る

円安と物価上昇の関係を知るために、日本の食料自給率について知っておいたほうが良いでしょう。

皆さんは、「食料自給率」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
食料自給率とはその名の通り、私たちが食べる食料を「自給している割合」です。

ざっくり言うと、「食べてるもののうち、どれくらいが国産?」となります。

「食料」といっても、その中には米や麦、肉、魚介類、野菜、果物など様々なものが含まれます、
それらを品目ごとに分け、日本国内で生産している量や、輸入している量を把握し、自給率を計算しているのです。

ちなみに、ここでいう「食料」には、私たち日本人が口にする「全ての食べ物」が含まれます。

スーパーマーケットなどで売られている生鮮食品や加工食品、ファミリーレストラン等での外食に使われる食材、輸入される原料、加工食品、お菓子やジュースなども含め、国内で流通している全ての食料を対象にしています。


お酒だけは嗜好品という理由から対象外となっており、食料自給率の計算には含めません。

「カロリー」と「生産額」2つのベース

食料自給率を計算するときには、最もシンプルなのが「重さ」を用いる方法です。
これは、生産「量」や輸入「量」など、「重量」を指標にした計算方法で、重量ベースなどと呼ばれます。

しかし、「全体の自給率」を求めるときに「重量」を用いるとややこしくなってします場合があります。

私たちが食べるものは多岐にわたります。

例えば「米」と一口に言っても玄米なのか精米なのか、はたまた炊いたご飯なのか。
「小麦」と言っても、原料なのか小麦粉なのか、はたまたこんがり焼きあがったパンなのか。

品目毎に考え方が変わってしまうと計算がこんがらがってしまうので、ひとつの「共通のものさし」に換算し、それを足して計算する方法が用いられるのです。

カロリーベース

まず一つのものさしが「カロリー」です。

人間が生きていくために必要不可欠な食料を「安全保障」という観点から見たときに、最も基礎的な栄養価であるカロリー(熱量)着目したものがカロリーベースの食料自給率です。

令和元年度の数値は、38%となっています。

これは、国民1人に対して1日に供給している全品目のカロリーの合計(2,426kcal)のうち、「国内で生産されたカロリー」の割合を計算したものです。

カロリーという観点から調べると62%、実に半分以上が海外からの輸入に頼っているわけです。

生産額ベース

もう一つのものさしについてご説明します。それは「金額」です。

食料を生産する、輸入する、加工・流通・販売するなどの行為は、すべてお金に換算することができます。
これを「経済活動」と呼びます。

少し難しい話ですが、経済活動を評価する、という観点から生産額や輸入額もとに計算したものが、生産額ベースの食料自給率です。

令和元年度の値は、66%となっています。

日本全体に供給された食料の合計金額15.7兆円のうち、国内で生産された額は10.3兆円ということになります。

2つの食料自給率の違い

カロリーベースと生産額ベース。
2つの食料自給率をご紹介しましたが、この違いは何でしょうか。

カロリーベースの自給率はひとつ当たりのカロリーが高いもの、例えば米や小麦、油などの影響が大きくなります。

一方、生産額ベースの自給率は、単価の高い肉、野菜、魚介類などの影響が大きくなります。
また、単価は輸入品より国産品の方が総じて高い傾向にあります。
そのため国内生産額は高くなり、結果として生産額ベースの自給率はカロリーベースより高くなります。

ここから分かるのは、生産額ベースが高いから日本が食料を十分に自給できている、という結論にはならないということです。

まとめ

本題に戻りましょう。

日本は多くの食料を海外からの輸入に頼っている、というデータを確認していただきました。
ということは、海外から仕入れる食料が値上がりすると、私たちの食卓に届くまでの流通コストが上がります。

ある商社が、1ドルの小麦を仕入れます。以前100円で仕入れられたのに、
今は円安で150円支払わなければいけない。
仕入れコストが上がったのでその後の卸、物流などにかかる費用もかさみます。

結果として小売店などの販売価格も上がり、私たちは今までより多くのお金を支払って商品を購入しなければならなくなります。
これが、今まさに起きていることです。

以上、円安でなぜ身の回りの物価が上がるのか、ということを簡単にまとめて解説しました。

私が活動する現場では、「では、なぜ円安になるの?」「もう円高には戻らないの?」「物価が上がったら貯金はどうなるの?」など、様々なご質問を頂戴します。
これらに関しても、機会があれば当ブログでご紹介していきます。

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