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個人投資 ”3つの壁”

個人投資 ”3つの壁”

投資には「自分でやる」方法と、「プロに任せる」方法があります。

プロに任せるのが「投資信託」という仕組みです。

政府は確定拠出年金や少額投資非課税制度などの制度から分かるように、

投資信託の方を強く押し出しています。

一方で、自分で投資をする場合には3つの壁があると言われています。

今回はその3つの壁、そして投資信託の特徴についてご紹介していきます。

自分でやるか、プロに任せるか

前述した通り、投資には
自分でやる方法と、プロにお任せする方法があります。


今は「流行」で投資を始める方が多いので、
自分でできそう!と気軽に考えてしまう風潮もあります。

しかし、個人で株式市場に参入する上では【3つの大きな壁】を攻略する必要があります。

1つ目の壁【市場予測】

資産形成のご相談をお受けする際、

「これからどの銘柄が上がりますか?」
といった質問を受けることがあります。

自分で投資をする場合、大切なのが「市場予測」です。

この銘柄が上がる、この銘柄が下がる…

このように「相場」を予測して、
「安く買って高く売る」ことに成功すれば資産は増えます。

逆に、
「買ったときより安く売ってしまったら負け」です。


この予測を当て続けるのは、実はとても難しいのです。

ちょうど、サッカーのワールドカップが行われているので、
これで例えてみます。


もし皆さんが全くサッカーをしたことがないとして、

「サッカーで勝てる本」
もしくは「サッカーが上手くなるYouTubeチャンネル」を
一生懸命勉強している状態だとします。

何かサッカーがうまくなった気がして
自信満々なのですが

急にこんなことを聞かれたらどう答えるでしょうか。

「サッカー日本代表と対戦したら、10試合のうち何勝できそうですか?」

強がる方もいるかもしれませんが、
心のなかでは正直に「さすがに1勝もできない」と感じるでしょう。


個人で株式市場に乗り込むことは、これに似ています。

株式市場は株式ディーラーを始めとした機関投資家、
数億円規模の資金を動かす個人投資家といった、
百戦錬磨の魑魅魍魎(ちみもうりょう)がひしめく世界となっています。

まさに「投資の日本代表集団」といったところでしょうか。



彼らは桁違いの資金力を持ち、
膨大な知識量と組織力、
さらにはAI(アルゴリズム)を駆使して市場を予測し、
瞬間的な判断力と決断力でトレードを繰り返しています。

そんな世界に、投資本やInstagramをかじった程度の投資初心者が
「こんにちは!」と参入しても、まず相手にされません。

しかし、昨今「投資で勝てる本」や
「投資が上手くなるYouTubeチャンネル」
「投資に詳しいインフルエンサー」は大人気。

それを毎日見ていたら
「なんか簡単にできそうだな」と感じてきますよね。

特に2-30代で、半ばファッション感覚で投資をしている方が多い印象です。

皆さんは以下の項目に、いくつ当てはまるでしょうか。

・「誰々さんが株で儲けたらしいよ」という話を聞くととても気になる
・何者かは分からなくても、フォロワーの多いインフルエンサーの言う事は間違いない
・株価が下がると、これからもまだまだ下がるのではないかと思う
・ファイナンシャルプランナーには「買うべき銘柄」を教えて欲しい
・SNSや投資系の雑誌で「上がっている銘柄特集」を見るとすぐに買いたくなる

「個人投資家の約9割が負けている」という話をよく聞きます。
上記の項目に一つでも心当たりのある方は、個人で市場に乗り込むのは止めておきましょう。

2つ目の壁【資金】

「いやいや、それでも私は勝ち続ける自信がある。」
「一生懸命YouTubeで勉強したんだから、バカにしないでもらいたい。」

という方も、安心はできません。

すぐに次の壁が現れます。それは【資金の壁】です。

投資にはまとまったお金が必要、というイメージをお持ちの方は多いと思います。
では、まとまったお金とは一体いくらくらい必要なのでしょうか。

日本を代表する企業として、例えばユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)を見てみましょう。


皆さんが「ユニクロの株を買おう!」と思った時、
いったいいくらで買えると思いますか。

ユニクロの株価は、1株あたり約8万円です。
(2023年11月21日前日終値)

えっ、意外と安い?
8万円なら、買えないこともない!
1株だけ買っちゃおうかな。
じゃあついでにトヨタ自動車も1株!ソニーグループも1株!

と、行きたいところですが
残念ながら私たちが個人で投資をする場合、こういう買い方はできません。


皆さんは、ポテトチップスを買ったことがあるでしょうか。

スーパーに行って「ポテチを1枚だけ売ってください!」
と頼んでも、売ってくれませんよね。

ポテトチップスは「袋売り」が基本です。



上場している会社の株式も同じで、
購入するときには「単元」というものが定められています。

1単元、2単元、という単位でしか買うことができません。
※一部例外あり


では、この単元とはいったい何株なのか。
なんと「100株」です。


私たちが個人でユニクロの株式を買おうと思ったら、
1株8万円×100株(1単元)=800万円

これだけの資金が必要ということになります。


これが高いのか安いのか、という感覚は
それぞれ異なるかも知れませんが少なくとも

ある程度のまとまったお金を用意する必要がある

ということは間違いなさそうです。

3つ目の壁【倒産のリスク】

「800万でも1000万でも、自由に使えるお金があります!」

そんな方もいるかも知れませんので念のため3つ目の壁を紹介しておきます。
それが【倒産のリスク】です。



2010年1月19日、
ある大企業が会社更生法を申請し、
事実上の経営破綻(いわゆる倒産)をしました。


それが、日本航空(JAL)です。





当時の記事によると、

いわゆる9.11(米国同時多発テロ)などが原因で
国際線の需要が激減、脆弱な財務が続いていた状況に、
リーマンショックによるビジネス需要・国際貨物需要の急激な減少が加わり、
大幅な減収となったことが決め手と見られています。

出所:日本航空 株式会社企業再生支援機構に対する再生支援申込み及び支援決定、並びに会社更生手続き開始申立て及び開始決定に関するお知らせ


破綻時の負債総額は2兆3221億円。
帝国データバンクによれば、1989年から2019年までの
平成30年間の大型破綻ランキングでは4番目。

負債が大きくなりやすい金融機関を除けば、最悪の負債総額となりました。

参考:平成の大型倒産 負債額ランキング(1989ー2019年)
1.協栄生命保険…4兆5297億円
2.リーマン・ブラザーズ証券…3兆4314億円
3.千代田生命保険…2兆9366億円
4.日本航空グループ…2兆3221億円(※)
※「日本航空」「日本航空インターナショナル」「ジャルキャピタル」の合計

出所:帝国データバンク 平成の大型倒産・上位 30 社


会社更生法適用のリリース前から、
事前の報道の影響で日本航空の株価は大きく下落。

100%減資(※)が報じられた直後の1月13日には
なんと1桁台の【7円】にまで急落していました。
※100%減資=既存株主が持つ株式の価値をゼロにする処置

そして2月19日、日本航空株は株価1円で最後の取引を終え、上場廃止となります。


日本を代表する企業である日本航空でも、
このような事態に陥った歴史があります。

この企業なら大丈夫、ということはありません。
すべての企業がリスクを持っています。

私たちが個人で株式市場に殴り込む上では
「持っている株式の価値が無くなる」というリスクとも付き合っていくことになります。

投資信託の仕組み

個人で株式市場に参入する上での、
3つの壁(リスク)をご紹介しました。

ここからは、投資信託という仕組みについてご紹介していきます。

投資信託をうまく活用できれば、
上記3つのリスクをうまく避けられる可能性があります。

1.市場予測について

日経平均は将来、今より上がるのか、下がるのか。
今は底値なのか、それともまだまだ下がるのか。
この銘柄は将来上がるのか、下がるのか。

「将来の相場の上げ下げを的中させる」のが市場予測でした。
この予測を当て続けることができれば、資産を大幅に増やすことができます。

もちろん、一度でも外れれば資産は大きく減少します。


一方で、投資信託を活用する場合、この【市場予測】をする必要はありません。


投資信託は、ファンドマネージャーと呼ばれる人たちに
自分の資産運用を任せる仕組みです。



【ファンド(金融資産)】の【マネージャー(管理者)】ですから、
簡単に言えば投資のプロです。

投資信託会社は、多くの人から預かったお金を投資に回して運用しています。
その運用を行っているのがファンドマネージャー。

ファンドマネージャーは企業調査や銘柄選定、
そして総合的な投資判断を通じて
投資家の期待に沿ったパフォーマンスを積み上げていくことを仕事としています。

どんな運用をするか、
どの企業の株の売買をするか、
どこの国の国債を売買するかなど、

総合的に判断して、預かった資産を増やしていきます。

ファンドマネージャーが扱うお金、つまり顧客から預かる資産は、
数十億円に達することも珍しくありません。

そのため、運用の成果次第では利益も莫大なものになります。

投資信託とは、平たく言うと
自分の代わりに、投資のプロに運用をしてもらう仕組みです。

2.資金について

個人で株式を購入する場合、
「単元」という決まりがあることをご紹介しました。

ある一つの会社の株式を購入するだけでも、
場合によっては数百万円もしくはそれ以上の元手が必要になります。



それに対して投資信託では
「少額投資」という手法を選択することができます。



ファンドマネージャーは、投資家から預かった資産をいったん【ファンド】に入れます。

ファンドというのは
ここでは、ひとつの「箱」のようなものをイメージしてみてください。




この箱に入ってくる資産は、数十億円に達することもあります。
ファンドマーネージャーは、この潤沢な資産を元手に投資を行うわけです。

この「ファンド」のおかげで、
投資家ひとりひとりは高額な元手を用意する必要がなく、
少額でも投資に参加することが可能になります。

10000円や5000円、
中には100円から投資に参加できる、といった証券会社もあります。

高額な資金を用意するこができないという方でも、
投資信託であれば日々のやりくりの中から少額で投資に参加することができます。

3.倒産について

日本航空(JAL)の経営破綻についてご紹介しましたが、
投資を行う上で最大のリスクとも言えるのが

「資産をはたいて購入した会社の株式が、倒産によって価値を失う」ことではないでしょうか。

事実として、
日本航空の株価は最終的に「1円」となりました。

実は、この最大のリスクを避ける仕組みがとられているのも投資信託の特徴と言えます。

時価総額加重平均

投資信託は多くの場合、
「時価総額加重平均」という方式を採用しています。
(じかそうがく・かじゅうへいきんと読みます。)

あまり聞き慣れない言葉ですがざっくり言うと

「時価総額の高い(儲かっている)会社から順番に買っていきますよ~」

という買い方です。



有名な投資信託の指標のひとつに「TOPIX」というものがあります。

TOPIXでは、日本の【全ての上場企業】の株式を買っていくのですが、
ここで時価総額加重平均が出てきます。

日本を代表する企業であるトヨタ自動車と楽天の時価総額を使って説明してみましょう。

トヨタ自動車の時価総額は約33兆円、楽天の時価総額は約1兆円です。
(2023年11月25日現在)

このとき、時価総額加重平均では、例えばトヨタの株は33口買いますよ。
楽天の株は1口しか買いませんよ。

という感じで、時価総額の高さに合わせて買う株式の口数を調整します。


もし仮に、楽天の時価総額が1兆円から10兆円に成長すれば
1口だけ買っていたものを10口に増やしますよ。

逆に、トヨタの時価総額が33兆円から20兆円に下がれば、
33口買っていたところを容赦なく20口に減らしますよ。

こんな感じで、時価総額の上げ下げにもちゃんと対応して、
口数を調整します。


つまり、時価総額が高い企業をたくさん買って、低い企業はあまり買わない。
時価総額が下がれば売るし、上がれば買い増す。

こんなストイックな運用をするわけです。


時価総額は毎日変動しているため、
国や銘柄ごとに常にスクリーニング(※)して管理してくれる。
※スクリーニング=条件に合うものを選び出すこと

これを、私たちが仕事をしている間も子育てをしている間も
ずーっとしてくれているのがファンドマネージャーです。


このように時価総額加重平均には「強い企業の株を中心に保有できる」という
素晴らしいメリットがあるのですが、

これは同時に「倒産のリスクヘッジ」にもなっています。


時価総額が高い企業の株式から順番に買っていくわけですから、
自動的に時価総額が低い企業、もしくは下がった企業の株式は容赦なく売られていきます。

経営破綻する企業の時価総額は、一般的に下がっていきますので
リスクが大きい企業の株式は順次、手元から離れていくわけです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

個人での株式市場参入には3つの壁があり、
それに対して投資信託という仕組みが多くの意味で、
私たち子育て世代の投資をサポートしてくれることがご理解いただけたと思います。

政府が推奨する
「確定拠出年金」も「少額投資非課税制度」も
投資信託の仕組みです。

投資はギャンブル、という強いイメージがありますが、
正しく投資信託の仕組みを理解すれば、
伸るか反るかのギャンブルにはならないということです。


私はもっと派手な方がいい!
大きく儲けたい!
一攫千金を狙う!という方には向かないですが、

リスクをできるだけ避けて、ある程度大きく資産形成をしたい。
という方にはぴったりの仕組みと言えます。

投資信託をうまく活用し、教育資金や老後資金を作っていきましょう。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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