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“バランス型”は本当に初心者向け?②

“バランス型”は本当に初心者向け?②

前回の記事では

そもそも「バランス型」とは何なのか

ご説明しました。

日本の金融機関では

このバランス型が安易に販売され

消費者としても何となく

「安全なのではないか」というイメージを

持ちやすい傾向にあります。

今回の記事では

なぜバランス型が長期投資に向かないのか

私の考えを述べていきます。

バランス型こそが最善の分散投資?

「分散投資が投資の基本」

これは投資に関心のある
多くの方が耳にすることだと思います。

将来、どうなるか分からないので
株式100%投資というのはできるだけ避け
債券や不動産投資(REIT)など
幅広く投資すること大切。

このやり方が資産を安定させ
長期では良い運用成績に結びつく。

こういった考え方です。

事実として、企業型確定拠出年金(DC)や
個人型確定拠出年金(iDeCo)のパンフレットでは
この分散投資の重要性が強調されています。

結果、企業型DCの運用では
「バランス型ファンド」が大人気です。

「バランス型こそが最善の分散投資」
これまで信じられてきたこの常識は
果たして正しい選択なのか。

私個人の考えをお伝えして行きます。

この記事で分かること


・バランス型は長期投資にふさわしいのか


債券を混ぜれば安心?



バランス型ファンドといえば

・安定運用
・中間運用
・積極運用

といったものや

・バランス60
・バランス40
・バランス20

といったラインナップがあります。

多くの場合
「株式+債券」をそれぞれのバランスで組み合わせていたり

最近の流行では
8資産均等型といって

・国内債券
・外国債券
・新興国債券
・国内株式
・外国株式
・新興国株式
・国内REIT
・外国REIT

という多くの資産に分散するものも登場しています。

教科書上では基本的に
「国内債券保有比率が高いほど安定運用できる」とされています。

ここで、10年物の国内債券の利回りの推移を見てみましょう。



現在は日本銀行の事実上の利上げにより
多少の利回りを回復していますが

長期にわたって概ねマイナス運用となっています。

かつての米国長期債のように
3%などの金利が付けば別ですが

そもそも長期的な運用成果を求める中で
利回りの上昇が見込めない国内債券が
必ず含まれるバランス型ファンドは
個人的には推奨していません。

暴落を抑制するのは逆効果



投資において最も怖いことは
「価格の暴落」

つまり、資産が減ってしまうことです。

2002年
ノーベル経済学賞受賞者である
ダニエル・カーネマンらが提唱した
『損失回避バイアス』では


「得る喜び」と「失う悲しみ」を比べると
人間は「失う悲しみ」の方が強く感じる
その強さは2倍以上である

とされています。

では投資の際に
価格の暴落、つまり「失う悲しみ」を
抑えるにはどうするか。

価格の変動が少ない「債券」を
ポートフォリオに組み込むことです。


これが、バランス型を購入する方の心理です。


しかし
今まで私の記事をご覧頂いた方は
もうお気づきかもしれませんが

長期積み立て投資においては
価格の下落こそが大切


という基本的な考え方があります。


長期投資に暴落は必要



投資の成果は「価格✕量(口数)」であり
この量を効率よく積んでいくためには
価格が下がったときも買い続けることが大切です。

「価格変動の少ない債券を混ぜることで
価格の下落を抑えることができます」

この考え方は
投資初心者の方にとっては
安心感がありますが

「量」の概念を
知っている方には意味のない

もっと言うと
長期資産形成の障害になることが
分かると思います。

長期的に価格が上昇しにくい

「価格上昇時の追随率の低さ」も
バランス型の弱点であるとされます。



2020年3月をボトムにした
株価上昇時(コロナショックからの回復)を見てみましょう。

この際の上昇局面では
21年8月末までに

国内株式(藍色の線)においては56.02%
先進国株式(グレーの線)においては76.31%の
上昇となっています。


一方で
バランス型(赤い線)の上昇率は
33.24%の上昇にとどまっています。




価格下落時は
暴落を抑え量を買いにくくし

価格が上昇する局面では
株価の上昇率に劣後する。

今後、世界の金利が
急激に上昇するような
シナリオは現状考えにくく

むしろ
金利が長きに渡って
低く据え置かれる状況が続くであろう

というのが一般的な見通しです。

長期投資にバランス型を採用することについて
明確な運用方針があるのであれば否定しませんが

「なんとなく安全そうだから」
という安易な考えや

「とりあえずこれにしときましょう」
というセールスの言葉を鵜呑みにして

安易に採用することについて
メリットは少ない

むしろ
デメリットの方が
大きいのではないかと考えています。

長期投資でのパフォーマンス

概念的な話題ばかりでしたが最後に
実際のパフォーマンスをご紹介しておきます。

20年間の長期投資を行った場合の
バランス型と外国株式の
運用成果の比較です。

過去のデータですので
未来を約束するものではありませんが
これから長期投資を行う方には
ヒントになるはずです。



まずはバランス型を確認しましょう。

ポートフォリオについては

・外国株式40%
・国内株式20%
・外国債券20%
・国内債券20%

いわゆる「バランス60」という商品です。


20年間、投資を継続したときの
年率リターン最高値は
9.8%です。

リーマンショックの最中に売却した方は
最低値を叩いていますが

その年率リターンは2.6%です。

そして平均値を見ると6.0%。

長期投資では
価格の影響を受けにくくなるため
最高値と最低値の差は比較的小さく
平均値で確認しても良いと思います。

元本割れは過去一度も起きていませんので
安定した資産運用と言えるかも知れません。


次に、外国株式100%での
運用について見てみましょう。

ギャンブル性の強い
ポートフォリオと思われるかも知れませんが

20年間の長期投資ではどういった成果になっているでしょうか。





元本割れはバランス型と同じく
過去には一度も起きていません。

「量」の概念を知っている方にとっては
全く不思議ではないはずです。

では、年率リターンはどうでしょうか。

最高値14.2%
最低値 3.9%

そして平均値は8.1%となっています。


もう一度バランス型と比較してみましょう。



あくまでも一定の条件下ではありますが
今後の長期投資の参考となる数値ではないでしょうか。

まとめ

いかがだったでしょうか。

リスクを極限まで小さくし
なおかつ大きくリターンを得る

これが長期投資を行う理由のはずです。

なんとなく暴落が怖い。
なんとなく安全そう。

長期投資にやり直しはききませんので
しっかりと目的を確認し
最低限の知識を持って取り組んでいくことをお勧めします。


・バランス型は債券が含まれる
・債券を取り入れる意味を語れるなら良い
・過去の20年運用成果ではバランス型は外国株式に劣る

アドバイザーが必要な方はご連絡ください。

今回も最後までお読みいただき
ありがとうございました。

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